サーチュインと健康長寿
老化や寿命に関する研究は、多様な角度から進められていますが、なかでも今期待を集めているのが、生物の老化を防止し、寿命を延ばすとされる長寿遺伝子(サーチュイン(※1))です。この遺伝子は誰もが持っており、活発化させることで人類の平均寿命は百歳を超えるといわれています。
飢餓状態で活発になる、百近い老化要因を抑制する遺伝子
サーチュインは飢餓状態のときに働く遺伝子で、現在の日本のような飽食時代には眠ってしまっています。ところが、飢餓やカロリー制限などでサーチュインが ONになると、細胞内で指揮者のような働きをし、およそ百にもおよぶ老化要因を抑える効果があると考えられています。
長寿遺伝子(サーチュイン)の発見
長寿遺伝子(サーチュイン)は数種類発見されていますが、発見のきっかけは酵母菌の研究者であるマサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授の提唱によるものでした。教授は 1991年、酵母菌をモデルとした老化研究を開始。8年の歳月をかけ、1999 年に、通常の栄養を与えた酵母菌よりも、栄養を少なく与えた酵母菌の寿命が延びること、長寿酵母で Sir2遺伝子が活発にはたらいていることをつきとめました。そしてこの Sir2遺伝子は、酵母菌だけでなくショウジョウバエや線虫、魚、ネズミ、そしてサルやヒトなどほとんどの生物が持っていることもわかったのです。
活性化されたサーチュインが、細胞の寿命を決定するテロメアの短縮を抑制
サーチュイン遺伝子は食物不足などのストレス因子によって活性化され、細胞修復、エネルギー生産、アポトーシス(細胞の自然死)などに影響を与えます。
普段はOFFになっているサーチュインがONになると、遺伝子保護物質・ヒストン(DNA結合制御たんぱく質)のアセチル化を防ぎ(分解)、それが DNAの露出を防いで、遺伝子発現(※2)を抑えます。その結果、細胞の寿命を決定するテロメア(※3)を伸長するテロメラーゼの作用を活性化することで、細胞寿命を延ばしてくれるのだそうです。
(※1)サーチュイン : サーチュインとは、体内で非常に重要な役割を担っているNAD依存性脱アセチル化酵素群(たんぱく質)のこと。ヒトのサーチュインは、現在 7種類(Sirt1~Sirt7)が知られている。
(※2)遺伝子発現 : 遺伝子の情報が細胞における構造および機能に変換される過程をいう。具体的には、普通は遺伝情報に基づいてタンパク質が合成されることを指す 。
(※3)テロメア : 染色体中の1本のDNAの末端にある染色体を保護する特殊な領域のこと。人間の体細胞には細胞分裂できる回数 に限界(約 50回)があるが、この回数を決めているのもテロメア。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-1 レスベラトロールの秘密 ブックレット版』より