昭和大学 薬学部教授
佐藤 均 薬学博士
CBD(カンナビジオール)の可能性
私は人体に投与した薬物が体内でどのように取り込まれ、どのようなメカニズムで作用し、どういった効果や副作用があるのかを調べる「薬物動態学」を長年に渡って研究しています。その中で CBD(カンナビジオール)は、今から約7年ほど前に欧米でブームになっていると聞き、興味を持ちました。調べていくうちに医薬品にもなりうる可能性を充分に持っていると確信し、6年ほど前に研究をスタートしました。
CBDとは大麻草に含まれる『カンナビノイド』と呼ばれる成分のひとつです。カンナビノイドは大麻草にのみ含まれ、130種類ほど存在しています。その中でも最も多様な作用があり、最も強力な作用がある、相撲で言えば横綱級の成分がCBDです。世界的にも研究者は多く、ここ数年で市場も爆発的に伸びています。
ただ残念ながら、日本では大麻草に対して誤解を受けやすいという現実があります。カンナビノイドで CBDと並び、知られているのが THC(テトロヒドロカンナビノール)です。陶酔感やハイになるなどの精神作用を引き起こすのがこのTHCです。
THCとCBDは分子の構造が非常に似ているのですが、人体に及ぼす作用は全く違います。THCは作用が強すぎるので、かえって毒性のほうが強く出てしまうのですが、CBDは作用が穏やかで人体にいい作用がたくさんあり、世界中からその事例や症例が報告されているのです。
ECS(エンド・カンナビノイド・システム)への作用メカニズム
いくつかあるCBDの作用メカニズムの中で注目されているのが、『エンド・カンナビノイド・システム(ECS)』への作用です。ECSは、私たちが生きていくために必要不可欠な身体調節機能です。体内のほとんどの場所に、CB1、CB2というカンナビノイド受容体が存在し、細胞間の情報をコントロールしていることが解明されています。
道路でいうと信号や横断歩道のようなもので、信号や横断歩道がなければ事故が起きてしまうように、この ECSが不調になると、細胞間コミュニケーションがうまくいかず、老化や様々な疾病を引き起こす原因になると言われています。
CBDにはこのECSを整える効果があるため、免疫や神経伝達、自立神経などの恒常性を維持する作用が高いと考えられます。またここ数年では皮膚の傷の治癒やダイエット、ガン、鎮痛効果、歯周病など多数の研究論文も報告されています。
佐藤 均 (さとう ひとし)
薬学博士・昭和大学薬学部教授
東京大学薬学系研究科(薬剤学教室)修士課程修了後、金沢大学薬学部助手、富山医科薬科大学付属病院薬剤部助手、アメリカ国立衛生研究所(NIH)・癌研究所(NCI)症例研究員、スイス・パーゼル研究所客員研究員を経て、東京大学医学部助教授(東京大学医学部付属病院副薬剤部長兼任)となる。2000年から昭和大学薬学部教授(臨床分子薬品学教室)に就任。現在は同大学の基礎医療薬学講座薬物動態学部門を担う。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-29 CBDの秘密』より