文京学院大学名誉教授
芝 紀代子 医学博士
見極め、証明することが仕事
私の専門は臨床化学です。生体成分分析の分野で、病気を察知する側でずっと検査をやってきました。もともとは人の血液などを詳しく見ていたわけですが、途中からは研究対象として様々な原料の分析なども行うようになりました。
ですから、開発の分野では、新たに精製された成分を検査し、そこに予想していたとおりの結果が得られているかどうかを見極め、証明することが主な仕事の役割になります。
本当のプロテオグリカンであることの証明
プロテオグリカンコラーゲン複合体は10年以上も前からの関わりですが、私のテーマは成分の証明でした。確立された水抽出技術を用いると、生体中にある細胞外マトリックスそのもの(プロテオグリカン非変性Ⅱ型コラーゲン複合体)が抽出できるという仮説の証明。プロテオグリカンと非変性Ⅱ型コラーゲンが結合した複合体の状態で抽出できるという、他にはない画期的な方法です。
プロテオグリカンの抽出技術を確立することに大きな将来性
生体中にある物質をそのままに近い状態で取り出すことができれば、副作用もなく、もっとも良質の効果を得ることができます。ただし、いくら理屈が正しくても、すぐにその通りに成分を精製できるかと言えば、けっしてそんなことはありません。ちょっとした条件や環境の変化によって、結果はまるで違ったものになってしまいます。
私のところに分析のため持ち込まれる成分にも、残念ながらまがい物も多く、きれいに成分を証明できることは、そんなに多くはありません。プロテオグリカンコラーゲン複合体の水抽出技術については、開発研究チームにも信頼を置いていましたし、また本物のプロテオグリカンの抽出技術を確立するというテーマについても、非常に大きな将来性を感じておりました。
理論が証明された瞬間
けれども、正しい結果を証明できるまでには、大変な時間と労力がかかりました。期待と失望の繰り返しの末、最終的に精製したプロテオグリカンコラーゲン複合体を、前職であった東京医科歯科大学の専門家に依頼し、電子顕微鏡で撮影してもらった写真が私のところに届けられました。
その時の感動は今でも忘れられません。
プロテオグリカンとコラーゲンが見事に絡み合って、細胞外マトリックスを織りなす様子が明確に映し出されていたのです。理論が完全に証明された瞬間でした。
高齢化社会の課題に光
この写真により、プロテオグリカンコラーゲン複合体の実用化に大きな弾みがつきました。そして今、プロテオグリカンコラーゲン複合体の可能性や機能性が、製品化により証明されつつあります。
そして、来るべき高齢化社会に待ち受ける多くの課題の解決手段がひとつ、ここに生まれたことを確信しています。
細胞外マトリックスとは、細胞の外側の空間を生める物質で骨格的な役割を果たします。有形マトリックスは大部分がコラーゲン繊維で、少量のエラスチンが含まれます。無形マトリックスは水とプロテオグリカンのことを指します。
芝 紀代子(しば きよこ)
医学博士
文京学院大学 名誉教授
東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科教授を経て現職へ。専門は臨床化学生体成分分析。気泳動学会 常任理事、日本臨床検査自動化学会 評議員、日本臨床検査医学会 評議員、臨床化学会 評議員を歴任。1990年には日本電気泳動学会賞を受賞。「目でみる電気泳動法 1セルロースアセテート膜」(医歯薬出版)他、著書多数。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-35 プロテオグリカン非変性Ⅱ型コラーゲン複合体の秘密』より