東京理科大学 教養教育研究院 大学院理学研究科 教授
武村 政春 医学博士

欠かせない3つの栄養
私たちの身体は、細胞という小さな単位の集まりでできています。そしてその細胞の働きや形を決めるうえで、欠かせないのが「核酸」「アミノ酸」「タンパク質」という三つの存在です。
設計図→材料→完成品へ
まず核酸(DNAやRNA)は、細胞の中で「どんなタンパク質を、どのように作るか」を指示する遺伝情報を持った設計図のような存在です。その指示に従って、アミノ酸という小さな分子が一つずつつながり、タンパク質が合成されます。つまり、アミノ酸はタンパク質という構造を作る“材料”であり、タンパク質は筋肉や臓器、酵素、ホルモンなど身体の構造と機能を支える“完成品”です。
栄養のチームワークが健康を支える
この一連の流れ(DNA → RNA → タンパク質)は、どれか一つでも欠けたり、働きがうまくいかなかったりすると、細胞の再生や代謝、修復がスムーズに進まなくなってしまいます。たとえば、筋肉を増やしたいと思ってタンパク質だけをたくさん摂っても、それを合成するためのアミノ酸のバランスが悪かったり、遺伝情報を伝える核酸の働きが不十分だったりすれば、期待通りの効果は得られません。健康な身体づくりには、これらの連携がきちんと機能していることが前提なのです。
重要なのは、日常的に安定して身体に届けること
日々の食事では、魚、卵、大豆製品などの良質なたんぱく源を中心に、体内で核酸やアミノ酸を補える食品をバランスよく取り入れることが大切です。そしてもう一つ重要なのは、それらを一度に大量に摂るのではなく、日常的に安定して身体に届けていくこと。体内のアミノ酸や核酸は常に出入りしているため、こまめな補給が代謝のスムーズな働きにつながります。
いつ、どう摂るか
「何を、どれだけ摂るか」だけでなく、「いつ、どう摂るか」まで含めて考えること。それが身体づくりや健康維持の本質だといえるでしょう。
「核酸(DNA・RNA)」が「アミノ酸」の並び順を決めて、タンパク質」が作られる


武村 政春(たけむら まさはる)
医学博士
東京理科大学 教養教育研究院 大学院理学研究科 教授
三重大学生物資源学卒業、名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。2016年より東京理科大学教授に就任。DNAポリメラーゼの生化学的研究から研究生活をスタートし、現在は巨大ウイルスの分離・生態学的研究、巨大ウイルスのタンパク質に関する生化学的研究等を行っている。2001年世界に先駆けて「細胞核ウイルス起源説」を提唱。2016年以降、新しい巨大ウイルスを日本の淡水から複数分離・発見し、ウイルスとは何か、生命とは何かについての思索にも取り組む。『たんぱく質入門』(講談社)、『生物はウイルスが進化させた』(講談社)、『細胞とは何だろう』(講談社)、『ろくろ首の首はなぜ伸びるのか』(新潮社)ほか著書多数。
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-11 タンパク質とアミノ酸と核酸』より