
遺伝子の働きにアプローチする「核酸医薬」
薬は、症状を抑えるだけでなく、病気に関わる分子を直接標的とする時代へと進んでいます。いま医療の最前線では、DNAやRNAという「生命情報」を利用して、病気に関係する遺伝子の働きを調整する「核酸医薬」の開発・実用化が進んでいます。
これまで届かなかった標的へ
核酸医薬の大きな特徴は、病気に関係する遺伝子の情報を、塩基配列の違いを利用してねらえることです。DNAやRNAなど、遺伝情報に関わる分子を標的とすることで、これまで薬をつくるのが難しかった病気にも新しい治療法が生まれ、患者数の少ない病気、がん、神経の病気、感染症などで研究と実用化が進んでいます。
たとえば、指定難病の一つである「脊髄性筋萎縮症(SMA)」では、アンチセンス核酸医薬によって、運動機能の改善が認められています。
核酸医薬のカギを握る「届ける技術」
一方で、核酸は体の中でこわれやすく、必要な細胞までどう届けるかが大きな課題です。そこで、核酸を包んで運ぶ小さなカプセルや、分子をこわれにくくする技術が開発されています。こうした「届ける技術」の進歩によって、核酸は研究室で調べる分子から、実際の医療に使われる薬へと進化してきました。

核酸から広がる医療の可能性
もちろん、核酸医薬と食品・サプリメントはまったく別のものです。しかし核酸医療の進歩は、DNAやRNAが生命の設計図であるだけでなく、そのしくみを利用することで、病気に関わる分子を標的にできることを示しています。将来は、一人ひとりの遺伝情報や病気の状態に合わせて治療を選ぶ個別化医療へ。核酸は、医療の未来を動かす技術になりつつあります。
栄養書庫発行 : 「よくわかる健康サイエンス-16 核酸/ Nucleic Acid 最新研究エビデンス集」より















