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古くて新しいケトジェニック療法

料理

紀元前から認められていたてんかんに対する治療効果

紀元前5世紀ごろには、ギリシャの医師たちはてんかん治療の一環として絶食を実施していました。絶食による体内変化、つまり体内のケトン体(β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの総称)の濃度上昇というメカニズムが解き明かされていたわけではありませんが、経験的に絶食にてんかんの発作を抑制する効果があることを知っていたのです。

ケトジェニック療法

その後1920年代になって、アメリカ合衆国のメイヨー・クリニックの医師であるラッセル・モース・ワイルダーにより食事を節制するケトジェニック療法が開発されます。
ワイルダーは、当時求められていた薬物や手術以外のてんかん治療の可能性として、食事を通じた発作の抑制を試みました。

ケトン体がブドウ糖の代わりに

当時も、てんかんの発作を抑えるためには断食が効果的であることが分かっていました。しかし、断食は非常に困難であり、とくに子供にとっては負担が大きいものでした。そこで、ワイルダーは断食と同様の効果を持ちながらもより実施しやすい方法を探し始めました。
そして、炭水化物を制限し脂肪を摂取する食事により、肝臓は脂肪を効果的にケトン体に分解し、脳にエネルギー源として供給することをつきとめます。このようにして、ケトン体がブドウ糖の代わりに使用されることで、てんかんの症状を軽減するという効果が明らかにされました。

ケトンとブドウ糖のスイッチ

新しい抗てんかん薬の開発

この研究を基に、ケトジェニック療法はてんかん治療の一環として知られるようになりました。以降、この療法は10年以上にわたって広く使用されましたが、新しい抗てんかん薬の開発により薬物治療で発作を抑制できる患者も増え、ケトジェニック療法を必要とする患者は次第に減少していきました。

ケトジェニック療法の再評価

しかし近年では、複数の薬物治療が効果を示さない患者や子供のてんかん患者においてはケトジェニック療法が再評価されています。
とくに抗てんかん薬の効果が限定的な場合には、ケトジェニック療法が有効な治療手段として用いられています。

ケトジェニック療法の健康効果

ケトジェニック療法は、てんかん治療のみならず、近年ではその他の健康効果も注目されています。例えば、肥満や糖尿病の管理、エネルギー供給の安定、認知症の予防などにも効果があるとされています。

ケトジェニック療法

現在も様々な医学試験データが報告

また、最近の米国ルートヴィヒがん研究所による前臨床研究によれば、ケトジェニック療法(または高脂肪・中程度たんぱく質・極低炭水化物食療法)が膵管腺がん(PDAC)の化学療法における生存期間を延ばす可能性が示されています。この研究では、ケトン食療法と化学療法の相乗効果により、マウスモデルにおいて化学療法単独と比較して生存期間が3倍に延びることが報告されました。
現在、ケトジェニック療法はさまざまな研究や臨床でその効果が検証され、発展を続けています。将来的には、さらなる研究や治療法の進化により、ケトジェニック療法の有用性がより明確になることが期待されます。

栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-36 天然由来ケトン体の秘密』より

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