
2025年ノーベル賞が示した
免疫のブレーキ「制御性T細胞」を支える
「酪酸」のすごい力
2025年、ノーベル生理学・医学賞が京都大学の坂口志文博士ら3名に授与されました。彼らが発見した「制御性T細胞(Treg)」は、免疫の暴走を止める“ブレーキ役”。この発見が、自己免疫疾患やアレルギー治療に新たな道を開いたのです。
その制御性T細胞の働きを支える鍵物質が「酪酸」であることが、理化学研究所・東京大学・慶應義塾大学の共同研究(Nature, 2013, DOI:10.1038/nature12721)によって明らかにされています。
酪酸は、腸内細菌が食物繊維を発酵してつくる短鎖脂肪酸の代表で、腸のエネルギー源であると同時に、遺伝子のスイッチをオンにして制御性T細胞を増やす働きを持ちます。これにより、炎症やアレルギー反応を抑える仕組みが活性化されるのです。
つまり――ノーベル賞が示した「免疫のブレーキ」の正体を、腸内で静かに支えているのが酪酸。腸の中で生まれるこの小さな分子こそ、私たちの免疫バランスを守る“見えない主役”なのです。
本書では、酪酸を中心とする短鎖脂肪酸の働きと、その増やし方・育て方を、最新の科学的知見にもとづきながらわかりやすく解説していきます。
2025年10月19日発行 「腸内細菌がみんな元気に!短鎖脂肪酸を育てよう」
