麻布医院院長 ハーバード大学医学部元准教授
髙橋 弘 医学博士

豊かなアメリカが問い直した「食と健康」
私が最初にアメリカを見たのは、高校生のころでした。1969年から70年にかけてのアメリカは、まさに豊かさの象徴のような国でした。広い家、大きな車、あふれる食べ物。誰もが成功しているように見えた。ところが、その豊かさの裏側で、病気が多かったのです。
なぜ、これほど豊かな国で、健康が損なわれているのか。その一方でアメリカでは、食事と病気の関係を国家レベルで問い直す動きが始まりました。
国家プロジェクトが注目したのは身近な野菜だった
1977年のマクガバンレポート。そして1990年代初頭、米国立がん研究所が始めたデザイナーフーズ・プログラム。これは、「がんを食事によって予防できるのではないか」という考えのもと、植物性食品に含まれる成分に着目して研究を進めた国家的なプロジェクトでした。そこに並んだのは、特別な薬ではありませんでした。にんにく、キャベツ、しょうが、大豆、にんじん、セロリ、玉ねぎ、ブロッコリー、トマト、緑茶。つまり、私たちの食卓にある身近な食品です。
野菜の日米逆転劇から見えてきたこと
私は、その流れをアメリカで見ていました。そして後に、野菜摂取のグラフを見て、胸を打たれました。アメリカは野菜を増やしていった。日本は、もともと野菜をよく食べる民族だったはずなのに、逆に減らしていった。その後、アメリカではがんの罹患率も死亡率も、1990年代を境に下がる流れが見えてきます。もちろん、その背景にはさまざまな要因があります。治療技術の進歩によって死亡率が下がることはあります。しかし、罹患率まで下がるということは、病気になる前の段階で何かが変わったということです。
野菜を増やした国、減らした国
デザイナーフーズ後に起きた、日米の食卓の分かれ道

データ : FAO,FAOSTAT : Food Balance Sheets(髙橋先生提示資料より再構築)


※がんの推移は医療技術・検診・喫煙率など複数要因の影響を受けます。本図は髙橋先生提示資料をもとに食生活の流れを整理したものです。
「野菜を減らした日本」への危機感
私はそこに、食生活の力を感じました。そして同時に、日本への強い危機感を覚えました。野菜を増やした国と、野菜を減らした国。この差を、私たちは本気で考えなければならない。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-38 野菜スープの超健康力』より















