
体調が変わると腸内環境はいつ、どう変わるのか
世界中の研究チームが協力し、妊娠中の女性や腸の病気を持つ人、糖尿病予備群の人など、さまざまな人の腸内環境を長期追跡するプロジェクトが進んできました。たとえば米国NIH主導の第2フェーズヒトマイクロバイオーム計画(Integrative Human Microbiome Project:iHMP/HMP2)では、対象者を約1年間フォローし、「体調が変わると腸内環境はいつ、どう変わるのか」を詳しく記録しました。
その結果、「どのような人に、どのような腸内バランスが多いのか」といった傾向が見えるようになってきました。
世界規模で進む腸内データ革命
同時に、腸内にどんな菌がどれくらいいるのかという“名簿作り”も、世界規模で進んでいます。代表的なのが統合ヒト腸内ゲノム(UHGG)で、20万以上の腸内細菌の「設計図」を集めた巨大データベースです(Almeida et al., Nat.Biotechnol. 2021)。これによって「同じ名前の菌でも、人によって性格や働きが違う」といった違いまで追えるようになりました。

腸内環境によるオーダーメイドの食事提案
こうしたデータを土台に、イスラエルの研究グループは、腸内環境や生活習慣などの情報から「同じものを食べても、人によって血糖値の上がり方が違う」ことを予測する仕組みを開発し、一人ひとりに合った食事で血糖値を抑えられることを示しました(Zeevi et al., Cell 2015)。こうした流れの先には、「あなたの腸内環境なら、この食べ方が合います」というオーダーメイドの食事提案が、より身近になる未来があります。

腸内細菌の研究と日々の食卓
すでに海外では、腸内環境を整えることで腸の感染症の再発を防ぐ、新しいタイプの治療も始まっています。米国では、難治性のクロストリジオイデス・ディフィシル感染症の再発予防薬として、便由来の製剤Rebyota(2022年承認)と経口カプセル製剤Vowst(2023年承認)が相次いでFDAに認可されました(FDA 2022–2023)。
腸内細菌の研究は、データの世界にとどまらず、すでに現実の医療と日々の食卓に踏み出しはじめています。
第2フェーズヒトマイクロバイオーム計画
初期データをもとに、多層的なデータ(細菌のDNA、RNA、代謝物、宿主側の免疫や遺伝子発現など)を「統合(Integrative)」して解析しました。

栄養書庫発行 : 「よくわかる健康サイエンス-15 そうだったのか!マイクロバイオーム」より















