何かひとつではなく生活全体を管理
フレイルを予防・治療するためには、「身体的」「精神・認知的」「社会的」フレイル領域を三位一体として包括的に捉え、少しでも早い時期から対策を心がけることが求められます。
バランスのとれた良質の食事を心がける
基本となる食生活については、いくつになっても体重を減らしたほうが良いと誤解している方も多いのですが、フレイル対策ではバランスのとれた良質の食事を心がけ、体重減少や低栄養状態を避けることが大切です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」においても、高齢者の低栄養・フレイル予防が、重要項目として取り上げられています。
レジスタンス運動のすすめ
50代ぐらいまではメタボ対策のため太りすぎないよう心掛け、70歳以降は主食、主菜、副菜のバランスがとれた食事をしっかり摂るように意識し、加えて運動も並行して行うと良いでしょう。
とくに筋力を強化するような高強度のレジスタンス運動(筋肉に負荷をかけるトレーニング)が有効とされています。運動に対して不安がある場合には、医師あるいは専門的な医療スタッフに相談し、毎日の歩数を増やすといった無理のない範囲で運動を継続することが重要です。
フレイル予防に有効な習慣
習慣的な運動は認知機能にも良い影響を与えることが指摘されています。また、囲碁や将棋などの知的なゲーム、楽器の演奏、読書、日記をつけるなどの知的活動は認知機能を活性化させ、人との交流を行う社会活動も心理面を活性化し、いずれもフレイル予防に有効と考えられます。
3つの要素におけるフレイル予防
可逆性(予防・改善が可能な状態)が期待される早期に、どれだけ予防できるかが重要です。以下、「身体的」「精神・認知的」「社会的」3つの要素におけるフレイルの予防とは何かについて理解していきましょう。
■フレイル予防のポイント
フレイル予防ために、まず以下3つのポイントを理解しましょう。
1.健康な状態と要介護状態の中間地点
2.可逆性(Reversibility)がある時期
3.多面的アプローチ(身体/心・認知/社会性)
フレイル予防は、ただ運動し鍛えるのではなく、メンタルや社会的部分についても意識しながら全体的に底上げして行くことが重要です。フレイルにならないための一次予防と、なった後でも健康な状態に戻るための二次予防があります。その可逆性・移行性についての研究※によると、加齢のせいと考えられていたフレイル状態は、手入れをすることである程度回復し、健康な状態に戻れる可能性があることが明らかにされています。
※ Xue QL: The Frailty Syndrome: Definition and Natural History. Clin Geriatr Med. 27(1): 1-15, 2011
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-02 フレイルってなに?』より