メタボリックシンドローム問題
近年、食生活の変化や運動不足により肥満が増加しています。内臓肥満に高血圧や高血糖、脂質代謝異常などが組み合わさると、心臓病や脳卒中につながることから、肥満(メタボリックシンドローム)は国をあげて注意喚起されるほど深刻な問題になっています。
食物繊維の機能性に影響する腸内細菌
また、肥満を誘発する便秘の緩和に有効とされる食物繊維には、血糖値上昇を抑制する効果があることが近年分かってきました。この食物繊維の機能性に影響を及ぼすのが腸内細菌です。
代謝アップに短鎖脂肪酸
さらに京都大学の木村郁夫特任准教授らの研究により、腸内細菌が生産する乳酸菌生産物質の成分である短鎖脂肪酸が、脂肪の取り込みを制御し、腸の蠕動運動を促進することで、身体全体の代謝をアップさせる効果があることが2013年に発表されました(図1)。
■短鎖脂肪酸とは(図1)
腸内の善玉菌が水溶性食物繊維やオリゴ糖などを分解・発酵して産生する物質。腸内を弱酸性に保ち、腸粘膜のエネルギー源になり、大腸の蠕動を促進するなど、腸内環境を整える働きがあることが分かってきました。
短鎖脂肪酸が体重の増加を抑制する
短鎖脂肪酸が体重を減らすメカニズムが、高脂肪食を与えられた肥満マウスで体重の増加を有意に抑制した研究結果もあります(図2)。
■短鎖脂肪酸が体重に与える変化(図2)
腸内細菌の発酵によって産生される短鎖脂肪酸の効果を調べるため、3~4週齢のマウスを高脂肪食の食餌を与える群と、短鎖脂肪酸性食餌を与える群に分け、12週にわたって体重の変化を観察したところ、短鎖脂肪酸の群の体重の増加が抑えられたことが分かりました。
※出典 : Yuanyuan Lu et al. 2016.6 SCIENTIFIC REPORTS.
このことからも短鎖脂肪酸を直接的に摂り入れることができる乳酸菌生産物質は、肥満やメタボリックシンドロームの改善に期待が持てると言えるでしょう。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-30 乳酸菌生産物質の秘密』より