ケミンヒューマンニュートリションアンドヘルス主任研究員
フレデリック・カチック博士
緑黄色野菜と果物の摂取が健康と深く関係
緑黄色野菜や果物をたくさん食べている人は病気にかかりにくい、と言われます。特に、日常的に多くの野菜や果物を摂取している南太平洋諸島の人々には、がんの罹患者が少ないのです。緑黄色野菜を大量に食べている彼らは、アメリカの高齢者の、失明の主な原因である加齢性黄斑変性(AMD)にかかりにくいことも確認されています。
私はアメリカ農務省勤務の1983年から、アメリカで最も消費されている野菜と果物の分析を始め、そこに含まれる天然色素のカロテノイドという化合物を50種類以上発見してきました。カロテノイドは自然界に最も広く分布している色素群の一つで、黄・橙・赤・紫などの鮮やかな色彩が特徴です。
マルチカロテノイドの考え方
現在ではカロテノイドはひとつの成分だけを重点的に摂るのではなく、複数のカロテノイドをバランスよく摂ることが重要と考えられるようになりました。これが「マルチカロテノイド」の考え方です。
緑黄色野菜や果物はカロテノイドの宝庫です。私たち人間を含む動物は、自分の体内でカロテノイドを合成できないので、植物や微生物が合成したものを食物として摂取しています。
カロテノイド6種をバランスよく
アメリカ農務省の1990〜97年の研究調査で、健康な人の食事に含まれる多くのカロテノイドのうち、十数種類のカロテノイドだけが体内に吸収されることが明らかになりました。特に大きな割合を占めたのがルテイン、リコピン、αカロテン、βカロテンです。
さらにルテインとの相乗作用で大きな健康効果を持つのがゼアキサンチンです。また割合は多くありませんが、私が人の体内で発見した重要なカロテノイドにβクリプトキサンチンがあります。私たちはβクリプトキサンチンをルテインから変換するプロセスも開発しました。この主要なカロテノイド6種をバランスよく配合したサプリメントも開発しました。
カロテノイドと各器官の関係
食物に含まれるカロテノイドの分布は、ほぼそのまま人の血液や母乳における分布に反映されるため、多くのカロテノイドをバランスよく摂取することは非常に重要です。吸収されたカロテノイドは異なる器官や組織に取り込まれ、各器官における病気の予防や生態維持の役割を担っていると考えられています。
緑黄色野菜や果物とともにサプリメントも利用しながら、豊富なカロテノイドを摂取し、健康な生活を送っていただきたい、と願っています。
フレデリック・カチック(Frederick Khachik,Ph.D.)
メリーランド大学・化学生化学研究科上席研究員を経て、現在「ケミンヒューマンニュートリションアンドヘルス」主任研究員。14件の特許を持ち、66本の論文を発表、18冊の著書を刊行し、カロテノイドに関する 100回以上の講演を行ってきました(2018年8月現在)
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-24 マルチカロテノイドの健康力』より