
核酸こそ生命の設計図
私たちの身体を構成し、動かしているタンパク質。その材料はアミノ酸ですが、「どのアミノ酸を、どんな順番でつなぐか」という設計図を持っているのが、核酸(DNA とRNA)です。DNA(デオキシリボ核酸)は、細胞の核の中にある“命の設計図”。ここには、私たちの身体をつくるあらゆるタンパク質の情報が、文字のように並んだ塩基配列として記録されています(図1)。
■細胞の構造(図1)
細胞内には細胞核を中心に、エネルギーを生むミトコンドリアやタンパク質を合成するリボソーム、タンパク質を送り出すゴルジ装置などがあり、タンパク質を作り出しています。DNA は細胞核の中の染色体に存在します。RNAは遺伝情報の伝達やタンパク質の合成などに働き、細胞核、細胞質内、ミトコンドリアにも存在します。

タンパク質を合成するには転写と翻訳
タンパク質を合成するには、まずこの設計図の必要な部分をコピーすることから始まります。DNA から写し取られたのがRNA(リボ核酸)。この過程を「転写」といいます。特にmRNA(メッセンジャーRNA)は、情報を運ぶ役目を担っています。mRNA は細胞の核の外に出て、「リボソーム」と呼ばれるタンパク質合成の工場に運ばれます。そこでtRNA(トランスファーRNA)が、mRNA の情報に合わせてアミノ酸を一つひとつ運び、正確な順番でつなぎ合わせていきます。この作業が「翻訳」です(図2)。
■核酸から始まるタンパク質づくり(図2)
タンパク質を合成する働きを担うのがRNAです。DNAにある遺伝子情報をメッセンジャーRNAに「転写」(コピー)し、その遺伝子情報がアミノ酸情報に「翻訳」されます。翻訳された塩基配列をもとにアミノ酸をつなげて酵素・ホルモンをはじめとしたすべてのタンパク質が作られています。

DNA→ RNA → タンパク質の流れ
このようにして、ようやく1 つのタンパク質がつくられます。つまり、DNA→ RNA → タンパク質という流れが、生命を支える根幹なのです。
核酸は「タンパク質の設計者であり、現場監督であり、指示書そのもの」。核酸がなければ、どんなにアミノ酸があっても、タンパク質は正しく合成されません。そしてこの精密なシステムがあるからこそ、私たちは筋肉をつくり、酵素を働かせ、ホルモンを分泌できるのです。
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-11 タンパク質とアミノ酸と核酸』より





