地球はいつできたのか?
そのような遠大な過去からさかのぼって解説していきます。
地球上に蒸発しない水が溜まり、海の形成へ
現在の定説では、地球の誕生はいまから約46億年前。当時はまだマグマで覆われ、非常に高温でした。時間が経つにつれて、表面は固まり、土や岩石へと変化していきました。しかし、内部は高温のまま液状で残り、地球の内部構造が形成されていきました。
しだいに地球が冷え始めると、原始大気中の水蒸気が雨となって地表に降り注ぐようになりました。この強い雨によって、地球上に蒸発しない水が貯まり、ついに海が形成されたのです。
酸素がなくても生きていけるシアノバクテリア
約30億年前、その海の真っ暗で深い底に地球最初の微生物が発生します。現在私たちが知る細菌や古細菌に分類される生物の祖先で、シアノバクテリア(※1)という名前がついています。このバクテリアはどのようにしてエネルギーを得ていたかというと、まだ地球環境に酸素がなかったため、海中の1個のブドウ糖を分解して2個のATPを作り出す(解糖系)という方法でした。
つまり、最初は酸素がなくても生物は生きていくことができたのです。このような酸素を使わないエネルギー代謝の性質を嫌気的代謝(※2)といいます。
シアノバクテリアの光合成によって酸素が発生
海の底で発生したシアノバクテリアは次第に増殖し、生息範囲を広げていきました。
シアノバクテリアは海の浅いところにまで広がって、はじめて太陽光を浴びました。するとその一部は、光合成を行うように進化します。そして進化したシアノバクテリアは、光合成を通じて二酸化炭素から糖分を生成し、その過程で酸素を放出します。
この酸素放出量が徐々に増え、次第に地球の大気に酸素が含まれるようになりました。
酸素を用いて活動するミトコンドリアの誕生
やがて、いまの地球環境と同様に21パーセントの酸素を含む大気が形成され、酸素を用いて生命活動を行う新しい微生物が生まれてきます。それがミトコンドリアです。
ミトコンドリアは、エネルギーを生み出す仕組みがシアノバクテリアとは異なっています。酸素を用い、炭素を持った物質(ブドウ糖)なら何でも分解してエネルギーに変えるという好気的代謝(※3)が可能になったのです。
ミトコンドリアはすごい進化を遂げた微生物
シアノバクテリアはブドウ糖しかエネルギー源に用いることができなかったのですが、ミトコンドリアは摂取した炭素化合物なら何でも活用することができます。その結果、シアノバクテリアが1分子のブドウ糖から2個のATP(※4)しか作り出せなかった(解糖系)のに、ミトコンドリアは酸素を用いて簡単に炭素の分子を分解しシアノバクテリアの18倍、36 個ものATP産生が可能(ミトコンドリア系)になりました。
ものすごい進化を遂げた微生物だったわけです。
ミトコンドリアの働き
ミトコンドリアは、酸素を使ってブドウ糖を分解してATP を産生し、余ったものは水と二酸化炭素として排出します。それが好気的代謝で、エネルギーや体温を創る源となっています。
※1 シアノバクテリア:Cyanobacteria、藍藻とも呼ばれる。30 億年から25 億年前に地球上に出現し、酸素発生型光合成を始めた初めての原核生物
※2 嫌気的代謝:細胞への酸素供給量が需要より低下したときに起こる代謝
※3 好気的代謝:酸素を用い、嫌気的代謝の分解産物に残ったエネルギーを、時間をかけて効率取り出す代謝。そのエネルギーによりADP とリン酸が結合しATP を産生する。
※4 ATP:adenosine triphosphate の略。生物に必要なエネルギー源。地球生物の細胞は、ATP を経由し物質のエネルギーを利用しているため、「生体のエネルギー通貨」とも言われている。
栄養書庫発行 : 『ミトコンドリア活性で健康長寿』より