モチベーションを維持させるホルモン
テストステロンが果たす役割で男女を問わず重要なのが、身体的な効果と並んで心理面(精神)への影響です。テストステロンは「獲物を狩って戻ってくる」という狩猟採集生活で最も重要なモチベーションを維持させていたホルモンです。
テストステロンは社会性のホルモン
さらに獲物を公正に分配する公共性、不正を許さない正義の気持ちを向上させる働きもあります。これは何万年も続いた狩猟採集時代で、共同作業が不可欠だった時期に適応したマインドと言えます。
その他にもリスクを積極的に取る冒険心、しかも無闇にリスクを取るのではなく、緻密に戦略を立てる計画性などもテストステロンによって増強されます。つまりテストステロンは「社会性のホルモン」とも呼べるのです。
テストステロンは加齢とともに減少
これを現代社会に置き換えると、テストステロン濃度が高い人は溌剌として正義感が強いリーダーシップを持った人と言えます。しかしテストステロンの分泌量は年齢によって異なり、10~20代をピークに加齢とともに徐々に減少します。さらにストレスが加わると低下の度合いが大きくなることが分かっています。
減少の程度は個人差が大きいのですが、大幅に低下するようになると健康面、心理面で大きな悪影響が出るようになります。これがいわゆる「男性の更年期障害」と言われる症状です。
■テストステロンの精神への影響
テストステロンは物事の捉え方や、リスクを恐れない決断力、好奇心や挑戦する心などバイタリティ溢れる男らしい考え方に影響を及ぼします。それゆえ、テストステロン・レベルが下がると、モチベーションが維持できず、やる気がでなくなったり、不安を感じたり自信を喪失する、集中力の低下や記憶力の衰えなども見られるようになります。
もしうつ病と診断され、抗うつ剤を飲んでも改善を感じられない場合は、テストステロンの減少が影響しているのかもしれません。社会生活を健全に送る上で、テストステロンはこのようにとても重要なホルモンなのです。
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-4 テストステロンの健康力』より