認知機能の低下と身体的フレイル
認知機能の低下と身体的フレイルは、ほぼ同様の原因で悪化することが知られています。例えば、糖尿病・脂質異常症・高血圧症等の生活習慣病(心血管病リスク)、低栄養・ビタミンD欠乏等の栄養障害、性ホルモン減少・インスリン抵抗性等のホルモン異常、うつ等の精神・心理的要因などです。
好奇心や意欲の低下はフレイルの入り口
フレイルでは疲労感などの精神的・心理的な面も診断基準に含まれており、日常的に生活変化が少ない、または活動性が低くなっている状態の方は、日常的な脳への刺激量が少なく、認知機能・精神機能低下の可能性が高まります。
運動と教育が予防策
予防策としては「運動」と「教育」が広く知られています。ここでいう教育とは「好奇心と学習意欲」です。年齢に関係なく興味のあることを学んだり、新しい知識を得るための生涯教育を受講する、あるいは、英会話、囲碁や将棋、陶芸、絵画、資格取得に挑戦するのも良いでしょう。
チャレンジする気持ちが大切
自ら積極的に「学ぼう、もっと知りたい」という気持ちが、認知機能の低下を防ぐのに役立ちます。加齢によって認知機能が衰えるのは避けられませんが、そのスピードと衰える程度は人によってさまざまです。いくつになっても若いころと同じようにあらゆることに興味を持ち、チャレンジする気持ちを失わず、行動的な人々を「ソーシャル・エイジ=社会的年齢」が優れているといいます。
フレイルを遠ざける行動を
ソーシャル・エイジが低下すると、社会や人のつながりが減り、ソーシャル・フレイル(社会性のフレイル)を招きます。いくつになっても、好きなことを楽しく学んで認知機能を高め、フレイルを遠ざけましょう。
■コグニティブ・フレイルとは?
認知症には至っていないが認知機能障害者で身体的にフレイルな高齢者は「コグニティブ・フレイル(心や認知的な衰え)」と呼ばれ、具体的には倦怠感や意欲の低下等を伴います。
コグニティブ・フレイルは、IANA※1(栄養と老化に関する国際学会)とIAGG※2(国際老年学・老年医学会)が2013年に開催した国際コンセンサスカンファレンスにて、以下のような要件で定義しました。
1.身体的フレイルと認知機能障害が共存すること。
2.アルツハイマー型もしくはその他の認知症でないこと。
「コグニティブ・フレイルが問題なのは認知症や要介護状態が発生しやすいことです。フレイルは軽度認知障害、血管性認知症、アルツハイマー型認知症の合併リスクが高く、またフレイルの進行と微小梗塞の増加に関連があることが報告※3されています。」
心血管病リスク:糖尿病、脂質異常症、高血圧症 etc
栄養障害:低栄養、ビタミンD欠乏 etc
ホルモン異常:性ホルモン減少、インスリン抵抗性 etc
炎症:IL-8、IL-6、TNF-α etc
精神・心理的要因:うつ etc
Cognitive frailty:rational and definition from an(I.A.N.A./I.A.G.G.)international consensus group. J Nutr Health Aging. 2013;17:726-34.
※1 International Academy on Nutrition and Aging(IANA)
※2 International Association of Gerontology and Geriatrics(IAGG)
※3 Sargent L, Brown R : Assessing the Current State of Cognitive Frailty : Measurement Properties. J Nutr Health Aging 21 : 152-160, 2017.