ニキビの原因
顔や胸、背中などによくできるニキビは、尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)という皮膚の病気です。毛包という毛根を包んでいる袋状の組織を中心に炎症を起こすことが特徴で、過剰な皮脂の分泌や毛穴のつまり、アクネ菌の増加など、さまざまな原因が重なって発症する複雑な疾患です。
ニキビの種類
ニキビは毛穴が詰まって皮脂が溜まった状態(白ニキビ)から、炎症を起こし丘のように皮膚が盛り上がり(赤ニキビ)、さらに悪化すると膿疱となります。
このようにニキビが悪化してしまうと、治ったあとでも瘢痕(はんこん)と呼ばれるニキビ跡が残ってしまいます。
アクネ菌でニキビを改善する研究
2019 年に発表されたドイツの研究では、ニキビの原因となるアクネ菌に注目し、ニキビを引き起こさないタイプⅡアクネ菌を皮膚に塗布することで、皮膚のマイクロバイオーム※が調整される可能性について臨床試験が行われました(図1)。
14 人のニキビ患者に、ニキビを引き起こさないアクネ菌を含んだ局所皮膚製剤を塗布し、皮膚の常在菌叢やpH の変化を観察したところ、製剤に含まれた菌が定着し、常在菌叢の変化が確認されています。さらに皮膚の常在菌叢がバランスを戻してpH が低下し二キビが改善され、非炎症性病変の白ニキビや黒ニキビに関しては、有意な減少も確認されています。
こうした皮膚常在菌に注目したニキビへのアプローチは、今後研究が進むことでニキビや皮膚の炎症の新しい治療法が確立される可能性を秘めています。
※ヒトの体に共生する微生物の総称
■アクネ菌による皮膚マイクロバイオーム調整(図1)
尋常性ざ瘡の患者14人、男女(18~23歳)の皮膚にタイプⅡアクネ菌を塗布し、積極的な誘導 (5% 過酸化ベンゾイル ゲル、7 日間) と治療 (5週間)を行ったところ、すべての患者で安全性と炎症を起こしていない病変の有意な減少が確認されました。このことから皮膚微生物叢の微生物と菌株の不均衡が、ニキビ疾患を引き起こしている可能性が示唆されました。
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-5 美肌菌きれい研究ブック』より