ビタミンDは骨代謝に関与するだけでない
近年の疫学研究によりビタミンD(特にD3)濃度は骨代謝に関与するだけでなく、循環器疾患や2型糖尿病、上気道感染、自己免疫疾患、結腸がんをはじめとする悪性腫瘍、そしてサルコペニアなど、さまざまな疾患に関与していることが明らかにされています。
ビタミンD濃度が低下すると
また血中のビタミンD濃度が低下するとフレイルの有病率が上昇し、アルツハイマー病、脳血管障害、パーキンソン病などの症例では早期から脳内濃度の低下が知られています。これは血中ビタミンD濃度の低下により、神経細胞やグリア細胞(神経細胞ではない細胞の総称)の神経保護的作用が減弱し神経細胞が虚血をきたす、またアミロイド沈着などのストレスに対して脆弱になるためと考えられています。
散歩でビタミンD補給
ビタミンDは紫外線を浴びることでも体内で生成されるので、散歩などを通じた日光浴等を心がけましょう。晴れた日なら 10~15 分、曇りならば 30 分程度屋外で過ごすとよいでしょう。
ビタミンEやCのはたらき
高齢者では加齢に伴いフリーラジカル(活性酸素)が増加し、種々な臓器障害の原因となります。抗酸化ビタミンであるビタミンEおよびCは活性酸素の産生や脂質過酸化反応、アポトーシス(細胞の死)、タンパク質の酸化、細胞膜の損傷DNAおよびアミロイドPの毒性や蓄積を阻害する作用があります。
フレイルに対する予防効果
さらに、ホモシステイン(必須アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝における中間生成物)の数値が高いとフレイルのリスクとなります。それを低下させるビタミン(ビタミン B6、B12、葉酸)のサルコペニアやフレイルに対する予防効果も報告されており、今後のさらなる研究が期待されています。
■ビタミンD不足に要注意
若年女性や高齢者は、慢性的にビタミンDの非充足状態(欠乏あるいは不足状態)です。
たとえば日本人成人9,084人におけるビタミンD充足状況に関する報告によれば※、ビタミンD濃度のカットオフ値を75nmol/L(=30ng/㎖)とした場合、充足者はわずか9.1%で、約91%が非充足状態となっていることが明らかとなっています。
とくに女性では、年齢を問わずビタミンDの不足・欠乏者が多数存在しており、今後の平均寿命の延びと高齢社会の進展を考えると、きわめて憂慮すべき状態となっています。
※ Nakamura K, Kitamura K, Takachi R et al. Impact of demographic,environmental, and lifestyle factors on vitamin D sufficiency in 9084 Japanese adults. Bone, 74:10-17, 2020.
ビタミンDを多く含む食品
( )内には、1回に食べる目安とその量を示しました。数字(㎍)はビタミンD量です。
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-2 フレイルってなに?』より