ヒト幹細胞培養液に含まれるエクソソームとは
ヒト幹細胞培養液に含まれる細胞間情報伝達物質の中で、いまもっとも注目されているのが、エクソソームと呼ばれる細胞外小胞です。
エクソソームは、細胞から分泌される直径50~100nm(ナノメートル)の顆粒状で、もともとは細胞内の不要なものを外に排出するゴミ袋と考えられていました。しかしマイクロRNAやメッセンジャーRNAなど単独で細胞外に出るとすぐに分解されてしまう情報伝達物質を包み込んで安全に運ぶカプセルの役割があることがわかり、いまでは多くの研究者がエクソソームの研究に取り組んでいます。
確実に情報を伝達
エクソソームの表面は細胞膜由来の脂質でできていますが、多くのタンパク質が顔を出しているのが特徴です。その中には、外敵を退治する役割のマクロファージが外敵とは見なさないタンパク質があり、このおかげでエクソソームは安全に生存できています。またエクソソームの行き先を示す役割のタンパク質や、細胞のレセプター(鍵穴)に働きかけるリガンド(鍵)の役割を果たすタンパク質もあります。
さらに、エクソソームのカプセルが目的の組織細胞に到達して細胞膜に融合すると、カプセル内にいたマイクロRNAなどが目的の細胞内に入り、確実に情報を伝達できるのも大きな利点です。この特性を活かし、薬剤や核酸をピンポイントで治療細胞に送り届けるドラッグデリバリーシステムの研究も進んでいます。
これまでの化粧品成分にはない細胞の若返り
美容業界でも、エクソソームにはこれまでの化粧品成分にはない細胞の若返り効果があることがわかっており、今後への期待が高まっています。
■ エクソソームの特徴
これまでヒト幹細胞培養液は、細胞からの分泌因子が拡散する「パラクラインファクター」により周辺に作用すると考えられていました。近年の研究は、「エクソソーム」がより効果的に情報を伝達、機能的変化や生理的変化を引き起こしていることを明らかにしています。
エクソソームにはさまざまなタンパク質や脂質、RNAなどが包まれています。これらを別の細胞に運搬することによって、感染性病原体や腫瘍に対する適応免疫応答の媒介、組織修復等の機能的変化や生理的変化を引き起こします。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-25 ヒト幹細胞培養液の美容力』より