愛知医科大学病院 先制・統合医療包括センター教授・部長
福沢 嘉孝 医学博士
先制・統合医療とは
私はもともと消化器内科全般の資格を持つ医師ですが、特に肝・胆・膵(肝臓、胆嚢、胆道、膵臓)という消化に関わる臓器を専門にしています。2015年4月に先制・統合医療包括センターを立ち上げてからは当センターの教授・部長も兼務しています。主な対象疾患はがんを含む生活習慣病です。
弊センターの名称、〈先制・統合医療〉はこの生活習慣病であるがんを、発症前の未病の段階で発見し、生活習慣の改善によって発症を防ごう、という考え方を前提としています。その診断の方法が遺伝子解析です。
遺伝子解析
遺伝子であるDNAは生命維持に欠かせないたんぱく質合成の設計図です。このDNAを鋳型にしてメッセンジャーRNA(mRNA)が転写され、そのコピー情報をもとに各種のたんぱく質が合成されます。その転写の際に一部に変異や異常があると、がんの発生につながります。
私たちはmRNAにコピーされた遺伝子を、正常なサンプルと比較対照し、異常を発見すると、正常なDNAに比べてどの程度の発現率か、確認します。
例えば、生活習慣の乱れからがんの発症が疑われる場合、特定のmRNAの発現状況を調べ、その発現が正常の人に比べて4~8倍以上も多いと、がん発症リスクが高い異常な状態と判断します。
リスクを高精度で予測
男性では8臓器、女性では11臓器の発がんリスクがおよそ90%の高精度で予測出来ます。女性特有のがんは子宮がん、子宮頸がん、卵巣がん、乳がんがあり、男性特有のがんは前立腺がんがあるため対象臓器の数が違うのです。リスクが発見されれば何年かのうちに高確率で発症する可能性が大きいので、その芽を予め摘んでいくため、積極的に食事療法や運動療法等の指導を行います。
水溶性ケイ素の将来性
水溶性ケイ素との出会いは衝撃的でした。原料製造のシェア№1のメーカーからこれまでの様々な分野における水溶性ケイ素の活用実績や機能性についての説明を受け、その将来性に本当に驚かされました。
早速、いろいろな文献を読んでみると、骨の密度・強度・コラーゲンの質を高める等の論文や、免疫能に好影響を与える、という注目すべき論文もありました。しかも摂取後2時間程度で最大濃度に達した後、ゆるやかに尿中へ排泄されてしまう。これは安全で多くの機能を持つ優れた物質だな、と感じた次第です。
水溶性ケイ素と脂肪肝
私は生活習慣病の肝での表現型である脂肪肝の改善に取り組んでいて、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD=ナッフルディー)や非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steato-hepatitis:NASH=ナッシュ)の患者さんの治療を担当していたため、この水溶性ケイ素がそれらの病態にもある程度の効果を発揮するのではないか、と考えました。そこで研究の構想を練り、「生活習慣病合併脂肪肝に対する水溶性ケイ素の効果の検討」をテーマに2018年2月から臨床試験を始めたのです。(倫理審査承認)
その際に大きな後押しになったのが、水溶性ケイ素が肥満マウスの脂肪肝を抑制した、という論文でした※1。私が行ったのは水溶性ケイ素をはじめてヒトに投与する臨床試験※2です。私の今回の研究では、開始から半年間の水溶性ケイ素の経口投与が、ヒトの生活習慣病合併脂肪肝に対してある程度の改善効果を確認できた、画期的な結果が出たと思っています。
この研究論文はアジア国際健康促進・未病改善医学会の学会誌「未病改善医学」に投稿し、2020年に採択されました。
※1杉田和俊、川合麻美、他.高脂肪食負荷マウスにおける水溶性ケイ素の脂肪、肝抑制作用および糞臭低下作用 獣医畜産新報 JVM Vol.68 No.11 843-847
※2 福沢嘉孝、岡田憲己、神保太樹. 生活習慣病合併脂肪肝における水溶性ケイ素の有用性の検討
福沢 嘉孝(ふくざわよしたか)
医学博士・愛知医科大学大学院医学研究科(戦略的先制統合医療・健康強化推進学)
愛知医科大学病院 先制・統合医療包括センター教授・部長
愛知医科大学医学部医学科卒、愛知医科大学医学部消化器内科助教授、医学部教育センター長兼教授を経て、2015 年 4 月~同大学院・同病院に先制・統合医療包括センターを創設。ゲノム医学・医療および先制医療・統合医療を包括し、主に生活習慣病としてのがん関連遺伝子検査ならびに長寿遺伝子検査を実施。単なる予防医療ではなく、先制医療によるセルフメディケアの実践を推奨している。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-28 水溶性ケイ素の健康・美容力』より