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男性の更年期障害の原因は、80%が環境的な因子です

順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学主任教授
順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科長
堀江 重郎 医学博士

堀江重郎博士

更年期障害は男性にも起こる

加齢と共に発症する更年期障害は女性にだけでなく、男性にも起こることが分かってきました。女性は閉経前後でエストロゲンが急激に減り、心身に様々な不調が訪れます。男性の更年期障害も、男性ホルモンが減少することで、心身に深刻な状態が起こるのです。
男性ホルモンの減少は必ずしも加齢によるのではなく、男性が社会生活の中で自己表現しなくなる、あるいは社会的に認められなくなると低下します。
代表的な男性ホルモンであるテストステロンは、主に精巣で作られます。このホルモンの働きを一言でいうと、外に出かけて獲物を狩って帰るというもので、人類の何万年も続いた狩猟採集生活を支えてきました。獲物を取ること自体が次の狩猟のモチベーションになるのです。
現代でも仕事で感じる「毎日の獲物の手ごたえ」によってテストステロンは高まり、それが感じられないと減少します。分かりやすい例では定年でのリタイヤなどです。そのような時期に男性の更年期障害が起こりやすいのです。

テストステロンが低下すると

テストステロン低下によって現れる心の症状は、まず健康感の減少、さらに疲れやすい、気分が優れない、うつ症状などです。体の症状ではやたらに汗をかく、腰や首の痛み、性欲や勃起力の低下などの男性機能の衰え。さらに頻尿、筋力の衰えなどがあります。
人間の胎児の基本形は女性です。胎児は男性になるために自ら大量のテストステロンを作り出すことによってペニスと睾丸が形成され、男児として生まれてくるのです。さらにもう一度、思春期にテストステロンが高値になり少年から大人の男性になります。それ以降は体内で、筋肉や骨の維持、動脈硬化の抑制、体脂肪増加の抑制、認知機能の維持など多様な働きをします。

テストステロンイメージ

テストステロンを減少させないために

テストステロンが高値の人はリスクを取る、正しいことを好む、嘘をつかない、自分のことを優先しない、社会貢献をする、といった特徴があり、男性女性を問わず人気がある人が多いのです。よく「あの人は溌剌としている」と言いますが、その溌剌さはテストステロンの効果の表れと言えるでしょう。
テストステロンを減少させないためにはまず睡眠が重要です。増やすための方法としては生活になるべく運動を取り入れること、あとは自分が楽しいと思うことをどこかでやること。仕事が楽しいことが理想ですが、趣味の世界で楽しむとか、居酒屋で仲間と楽しく飲むとか、しがらみがなく楽しめて自分が認めてもらえる場所が必要です。ストレスを減らす活動として、ヨガや温泉に入るなども良いと思います。サプリメントではビタミンDや亜鉛は重要です。

LOH症候群とは

近年、こうした男性更年期障害の症状をLOH症候群※と名付けて治療するようになりました。LOH症候群が進行すると、糖尿病、脂肪肝、うつ病、不眠症、筋力低下、男性機能障害などが起こります。前立腺がんは直接の原因にはなりませんが、テストステロン低値の人では悪性度が高くなることが分かっています。また、直近の論文によるとテストステロン値が低いと新型コロナウイルスに感染した際に重症化しやすいという報告もあります。
テストステロンの減少によるLOH症候群は、高齢となって動脈硬化の進行や精巣・睾丸の機能が衰えることが原因となる場合もありますが、全体の80%は社会的、環境的な要因によると考えられます。特に不規則な生活習慣や心理的なストレスによって生まれる酸化ストレスが元凶と考えられます。

テストステロンレベルを維持・改善が重要

またテストステロンレベルは筋肉を使うことで維持されますが、現代は便利になってデスクワークも増え、筋肉を使わなくなっていることから、最近では若年層でもテストステロンレベルが低下しています。5年おきに各世代のテストステロンの値を調査している研究によれば、この30年で男性のテストステロンの値は著しく低下しました。
テストステロン減少によるLOH症候群に対して、現在はテストステロン補充療法※2など有効な治療法もあります。ぜひ、体内のテストステロンレベルを維持・改善して、いつまでも溌剌とした生活を送っていただきたいと願っております。

※1

LOH(LateOnsetHypogonadism:加齢性腺機能低下症)症候群

※2

テストステロン補充療法には、泌尿器科やメンズクリニックでの注射や塗り薬などがあり、程度などの個人差によって処置は異なります。


堀江 重郎(ほりえ・しげお)

医学博士 
順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学主任教授
東京大学医学部卒業。東京大学附属病院、米国テキサス大学、国立がん研究センター中央病院を経て、帝京大学医学部附属病院泌尿器科主任教授に就任。2012年より、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学主任教授、順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科長を務める。日本で初めてメンズヘルス外来を導入し、アンチエイジングと男性医学を広める。日本抗加齢協会理事長、日本メンズヘルス医学会理事長。著書も多数。

栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-4 テストステロンの健康力』より

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