いくつもの幸運な偶然が重なって、天然由来ケトン体はうまれた

元国立研究開発法人産業技術総合研究所生命工学領域主任研究員

河田悦和農学博士

糖質制限ブームとケトン体

Halomonassp. KM-1株、D-BHB生産プロセスを発見してから数年、生分解性プラスチック素材だと思っていたものが、じつは素晴らしい生理作用を持った機能性食品ケトン体でした。

ケトン体は、1990年代以降の糖質制限ブームとともに次第に脚光を浴びています。現在欧米を中心に、糖質制限を経て、ケトン体を体内で作るのではなく、外から摂取していく動きがあります。

ケトン体市場

ケトン体のアメリカにおける市場規模（2020年）は、約4.28ビリオンドル（約6200億円）となっており、成長率は年間6.5％。2028年には1兆円規模のケトン体市場が生まれると予測されています。

マーケットを押し上げる原動力は、現在はケトン体を使ったダイエット補助食品や、運動パフォーマンス向上などを狙ったアスリート向けの商品です。

ケトン体が多くの健康需要に応える

現在までに、ケトジェニックによって、アンチエイジングや糖尿病、認知症の予防、改善に効果があることは知られています。それゆえ、継続が困難な糖質制限に頼ることなく、ケトジェニックを実現できるような機能性食品であれば、今後より多くの健康需要に応えることができるでしょう。

いまの状況に歯止めをかけられる可能性

農耕社会が糖質を大量生産するようになり、人間はケトン体を中心とした生活から糖質を中心とした生活へ、現在では精製食品に頼る生活へと移り変わっていきました。結果、体内では、脂肪からのケトン体の誘導が行われにくく、逆に糖質からの脂肪合成が盛んに行われ、結果、種々の疾患を招いている状況です。ケトン体には、いまの状況に歯止めをかけられる可能性があります。私は、将来の健康寿命の延伸に貢献できることを信じ、現在の研究を進めていきます。