
香りの源にあるテルペン
ラベンダーの癒し、ミントの清涼感、レモンの爽やかさ──それらの香りの源にあるのが「テルペン」です。テルペンとは、植物が自然界で自らを守るために合成する揮発性有機化合物の総称で、現在までに5万種以上が確認されています。
香りの成分だけではない働く分子
本来、香りの印象を形づくる成分として知られてきたテルペンですが、実際にはそれ以上の機能を持つ“働く分子”です。虫除けや抗菌、炎症抑制など、植物が環境と向き合う中で獲得してきた多様な生理作用が、私たち人間の体内でも効果を発揮することが明らかになってきました。

テルペンと健康
近年の研究では、テルペンがどのように私たちの健康に貢献するのかが次々と解明されています。たとえば、リモネンはがん抑制や抗炎症作用が報告され、炎症と酸化ストレスを軽減する効果が確認されています。※1
また、β-カリオフィレンは、CB2受容体に選択的に作用することで、抗炎症や神経保護の働きを示すことがわかっています。※2
さらに、リナロールについては、不安やストレスの軽減に関する吸入試験が複数存在し、心拍数の低下や副交感神経の活性化、体温調整への好影響などが報告されています。※3
※1DOI:10.3390/biom14030334
※2DOI:10.1073/pnas.0803601105
※3DOI:10.1177/1934578X241232273
機能性分子へと進化
いま、テルペンは「香りを楽しむ」だけの成分ではありません。
医薬・サプリメント・スキンケア――その垣根を超えて、世界の研究者たちが“本気で”注目する機能性分子へと進化しています。
たとえば、α-ピネンやネロリドールは肌のバリア機能を整え、外的刺激からお肌を守る救世主として注目されています。フムレンやミルセンは、加齢やストレスによる神経変性にアプローチする可能性が期待され、さらにシトラールは紫外線ダメージを受けた肌の修復に貢献する作用があるとされています。

天然物医薬・美容・栄養分野での応用
こうしたテルペンの機能は、かつてのような香料としての使用にとどまらず、化粧品の有効成分、機能性食品素材、さらには医療分野での応用へと広がりを見せているのが現在の研究の流れです。
「香るだけ」だったあの精油たちが、いま“内側から働くチカラ”として科学的にも証明されつつあるのです。まさに、美と健康を願う私たちの心をときめかせる新時代の主役です。そして今、その研究と応用の舞台は、さらに世界規模へと広がり始めています。
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-12 テルペン/TERPENE最新研究エビデンス集』より





