
遺伝子レベルで見渡す時代
時代が進むにつれ、微生物を見る「目」も大きく進化していきました。
アメリカのカール・ウーズは、細菌が共通してもつ遺伝子を手がかりに、シャーレでは育てられない菌まで“親戚関係”をたどる方法を生み出しました。限られた菌だけを眺めていた時代から、環境全体の顔ぶれを遺伝子レベルで見渡す時代へと、一気に視界がひらけたのです。
和食と腸内細菌の関係
一方で、日本では早くから農学博士光岡知足※が、ヒトや動物の腸内細菌を分離・培養し、その姿を世界に先駆けて整理してきました。また、多くの学者らが味噌や漬物、納豆など、日本の発酵食品にすむ菌にも注目し、「和食と腸内細菌」の関係をいち早く追いかけてきたことは、現在のマイクロバイオーム研究につながる大きなヒントになりました。

腸内細菌の結果と原因
21世紀に入ると、先に紹介したジェフリー・ゴードンらの研究をはじめ、「腸内細菌は病気の結果として変わるだけでなく、ときに原因にもなり得る」という証拠がそろい、マイクロバイオーム研究は一気に加速しました。
制御性T細胞(Treg)の発見
この流れのなかで、日本からの発見も重要な役割を果たします。
腸内のクロストリジウム目と呼ばれるグループの一部の菌が、腸の中で炎症のブレーキ役となる「制御性T細胞(Treg)」を増やし、免疫のバランスを整えていることが報告されたのです。

日本の強み
研究室で蓄積されるデータと、台所や蔵で育まれてきた発酵文化の知恵――日本の研究の強みは、その両方を手にしているところから生まれているのかもしれません。
※光岡知足(1930年1月4日-2020年12月29日)
農学博士 理化学研究所主任研究員。腸内細菌学を世界で初めて樹立。腸内環境バランスの重要性を説いた「腸内フローラ研究のパイオニア」。

栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-15 そうだったのか!マイクロバイオーム』より





