3つの肝臓の働き
肝臓の主な働きは3つあります。一つは糖質やタンパク質、脂質などの合成・分解・貯蔵(代謝)、二つめはアルコールや薬などの解毒作用、3つめが食べ物の消化に必要な胆汁の生成・分泌です。これらの役割を果たすため、肝臓では数千種類もの化学反応が行われています(図1)。
■ 肝臓の役割とデノボ合成(図1)
私たちが食事から摂った栄養素は、胃や腸で分解、吸収されて肝臓へ送られます。そして、肝臓で加工されて貯蔵され、必要に応じて分解し全身へ運ばれます。その一連の働きを「代謝」と呼びます。他にも有害物質の解毒作用やタンパク質を分解する胆汁の生成・分泌を行っています。
沈黙の臓器
しかし、過度の飲酒やストレス、運動不足、肥満などが原因で、肝臓が炎症を起こすと、肝炎になり肝臓の機能が著しく低下してしまいます。肝臓は「沈黙の臓器」とも言われ、痛みなどの症状があまり出ないため、異常に気付いたときには脂肪肝や肝硬変へと症状が進んでいることもあります。
核酸が肝機能の低下を抑える
肝機能が低下するのは肝臓の細胞が炎症によって壊死するためですが、核酸には壊死した細胞を再生し、肝機能を改善させる働きがあります。核酸は肝臓のデノボ合成と各器官のサルベージ合成によって作られるので、加齢や肝機能の低下によりデノボ合成が衰えると肝機能の改善が難しくなるという悪循環に陥ってしまいます。そのため、核酸食によって補うことが有効となります。
肝機能を改善し慢性肝炎や肝硬変を予防する
核酸医療では、壊死してしまった肝臓の再生やがん化の制御をマイクロRNA※によって行う研究も進んでいます。大阪市立大学が発表した2016年の研究では、肝臓病の悪化を抑えるマイクロRNA(miRNA-29)が発見され、マウスでの実験でも肝線維化(慢性炎症の後に肝臓の組織に現れる変化)の改善効果が報告されています(図2)。核酸医療が発展し、慢性肝炎患者などの肝硬変の予防や発がんリスクを下げることなどが期待されています。
■ マイクロRNAを使った肝線維治療方法の開発(図2)
これまで慢性肝疾患の治療には、ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎を治療することで、間接的に肝腺維化の改善を期待する治療方法しかありませんでした。肝腺維化の進行に伴って減少するマイクロRNA29aを投与することで、肝腺維化の改善効果が見られました。
経過観察、溶媒のみ、機能しないマイクロRNAを投与した3グループでは、四塩化炭素投与によって誘導された線維が残ったままなのに対して、マイクロRNA-29aを投与したグループでは、線維が減少していることが分かります。
※マイクロRNA(miRNA)はタンパク質を作るのに関与せず、標的となる遺伝子からのタンパク質合成を抑制することで、遺伝子発現を調整する機能を担っています。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-36 核酸の秘密』より