美肌菌が元気なら乾燥肌にならない
皮膚には約20 種類の常在菌が棲んでいます。この常在菌の中で肌によい作用をもたらす善玉菌をさして、東京慈恵会医科大学の出来尾格博士が『美肌菌』と名付けました。
美肌菌は角層の表面と角質細胞のすきまに、1㎠あたり何千何万といて皮脂や汗を食べて分解し、グリセリンや脂肪酸などの保湿成分を分泌しています(図1)。美肌菌が元気なら、本来、肌は乾かずにしっとりとうるおいを保つはずなのです。ところが、肌を乾燥から守るために化粧水をつけ過ぎたり、乳液や美容液などを塗り過ぎることで、美肌菌の働きを弱めたり数を減らしてしまうことがわかってきました。
■美肌菌の働き(図1)
美肌菌は肌表面の皮脂や汗を栄養源として、グリセリンや有機酸を産生します。保護膜の働きがあるグリセリン、肌を弱酸性に保つ有機酸のおかげで、保湿や悪玉菌の増殖を抑える働きがあるため、多いほど美肌になるのです。
皮膚のバリア機能と化粧水
洗顔をすると肌表面にある皮脂が洗い流されるため、肌が突っ張ったり乾燥していると感じます。そこに化粧水をつけるとうるおったような気になりますが、本来、皮膚のバリア機能が働いていれば、化粧水は角層の中には入っていきません。うるおったように感じるのは、化粧水の成分にバリア機能を壊すアルコールなどの成分が入っているからです。バリア機能が壊れてしまうと水分の蒸発を抑えることができず、乳液やクリームで肌の表面に被膜を作らなければ、乾燥を抑えることができなくなります。
美肌菌が多いほど美しい肌に導く
また、化粧水に入っている防腐剤や抗菌剤によっても、美肌菌がダメージを受けてしまい、自然な保湿成分を作ることができなくなります。美肌菌は数が多いほどキメが整い、美しい肌へと導いてくれます(図2)。自らの美肌菌を育てることが、美肌への第一歩となるのです。
■美肌菌は4種類の常在菌のこと(図2)
表皮ブドウ球菌は、菌種名をスタフィロコッカス・エピデルミディスと呼びますが、近年研究が進む中で、表皮ブドウ球菌とほとんど同じ働きをする別の常在菌が存在していることがわかってきました。人によってスタフィロコッカス・エピデルミディス以外の表皮常在菌が表皮ブドウ球菌と同じ働きをしているのです。これらを総称してCNSと呼びます。
※ CNS=コアグラーゼ陰性のブドウ球菌群のこと。ヒトの皮膚・粘膜に常在する
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-5 美肌菌きれい研究ブック』より