
腸内細菌の働き
スウェーデンのベックヘド博士らは、腸内細菌がまったくいない無菌マウスと、普通のマウスに同じ高カロリー食を与える実験を行いました。すると、普通のマウスはみるみる太るのに、無菌マウスは太りにくいことが判明しました※①。腸内細菌がエネルギーの“取りこぼし”を減らし、太りやすい体質をつくる一面がある、というインパクトのある結果です。
腸内細菌の影響
さらにワシントン大学のゴードン博士らは、「片方がやせ、もう片方が肥満」という双子姉妹から便を採取し、それぞれ無菌マウスに移植するというユニークな研究を行いました。やせた姉妹の腸内細菌を移植されたマウスはスリムなまま、肥満の姉妹の腸内細菌を受け取ったマウスは、同じエサでも体脂肪が増えやすくなったのです※②。
腸内細菌の多様性
人を対象とした疫学研究でも、腸内細菌の「多様性」が高い人ほど、肥満やメタボリックシンドロームが少なく、インスリンの効きも良い傾向が報告されています。つまり、肥満や糖尿病は「カロリーの足し算引き算」だけではなく、「腸内細菌がどれだけエネルギーを絞り出すか」「炎症を起こしやすいか」という視点でも考える時代になってきました。
やせやすくなる近道とは
極端な食事制限よりも、食物繊維と発酵食品摂取を増やして腸内環境を整えることが、体質そのものを“やせやすい方向”へじわじわと変えていく近道なのかもしれません。
■ 肥満群では腸内細菌の多様性が低い
BMIが高い人と低い人の腸内細菌を比べると、肥満群ほど細菌の種類の豊かさ(多様性)が低く、特定の菌が目立って増えているパターンが多く見られます。
複数のコホート研究から、多様性が低い人ほど肥満やメタボの割合が高いことが示されており、「多様性=太りにくさ」を示す1つの手掛かりとされています。

■ 肥満者の腸内細菌を移植すると、マウスも太りやすくなる
双子姉妹の腸内細菌を無菌マウスに移植したゴードン博士らの研究では、肥満姉妹由来の腸内細菌を受け取ったマウスで体脂肪の増加が顕著でした。やせ姉妹の腸内細菌を移植されたマウスでは同じ食事でも太り方が抑えられ、腸内細菌が「太りやすさ」そのものを運んでくることが示唆されました。

① DOI:10.1073/pnas.0605374104
② DOI:10.1126/science.1241214
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-15 そうだったのか!マイクロバイオーム』より





