内因性カンナビノイドとカンナビノイド受容体
人体にもともと備わっている内因性カンナビノイドは、1992 年にAEA(アナンダミド)、1995 年に2-AG(2- アラキドノイルグリセロール)が発見されました。その内因性カンナビノイドに作用する受容体も特定され、神経細胞上に多く発現するCB1受容体と免疫細胞上に多く発現するCB2受容体が知られています。
【2 種類のカンナビノイド受容体と役割】
CB1:主に中枢神経系の細胞に存在
◉高次脳機能を司る大脳皮質、記憶の中枢である海馬、恐怖や情動行動を司る扁桃体、運動機能を調節する大脳基底核や小脳といった部位に豊富に発現。
◉ CB1受容体が活性化されると、食欲の増進・痛みや不安の軽減・筋肉痙攣の緩和などの効果がある(Δ9-THC による精神作用と同様の仕組み)。
CB2:主に末梢神経系の免疫細胞に存在
◉脾臓や扁桃腺、リンパ節などに多い。自然免疫を担う好中球・好酸球・好塩基球・マクロファージ・樹状細胞・ナチュラルキラー細胞や、獲得免疫を担うB 細胞・ヘルパーT 細胞・キラーT 細胞・制御性T 細胞などの各免疫細胞上にも発現。
◉ CB2受容体の活性化は抗炎症反応に関与。精神作用は伴わない。
受容体は鍵穴
受容体は細胞の表面上にあって、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報(感覚)として利用できるように変換する仕組みを持った構造のことで、レセプターともいいます。
外からの薬物を「鍵」とするなら、このレセプターは「鍵穴」にたとえられます。たんぱく質から構成される複雑な立体構造を持つこの鍵穴は、もともと体内にある鍵(内因性物質)のために存在しているのですが、体内に存在しない鍵(天然または合成物質)とも親和性があって結合することができるのです。
受容体は約1000種類ある
薬物とそれに対応する受容体は体内に1000 種類ほどあります。代表的なものは、血糖値の維持に重要なインスリン、女性ホルモンであるエストロゲン、交感神経を興奮させるアドレナリンとそれぞれの受容体など。
カンナビノイド受容体は数が多く、全身に分布している
カンナビノイドを取り込んで働くカンナビノイド受容体は結合して作用し、体内の恒常性維持に役立っていることが明らかになっています。カンナビノイド受容体は人体のさまざまな受容体の中でも最も数が多く、全身に分布して、それぞれの器官とシステムの機能調整に関わっています。(図1)
カンナビノイド受容体(CB1とCB2)の分布(図1)
エンドカンナビノイドシステム
身体の最適化を目指して細胞間のコミュニケーションを管理するのをエンドカンナビノイドシステムといいます。感情・学習・記憶・意思決定・認知機能・不安・ストレス・恐怖など、これらの感覚はどれもエンドカンナビノイドシステムの影響を受けるとされています。エンドカンナビノイドシステムが健全に働くおかげで、神経機能の制御・適正な免疫系の維持・正常な食欲や代謝・睡眠サイクル・ホルモンバランスなど、生命の基本的な身体調節が機能しています。このとき重要な役割を担うのがカンナビノイドなのです。(図2)
エンドカンナビノイドシステムの機能(図2)
栄養書庫発行 : 『カンナビノイドマスター入門』より