作用機序が異なるホルモンはそれぞれが特定の細胞にのみ働く
ホルモンは 『①特定の細胞でつくられ、②血流により標的細胞(臓器)に運ばれて、③標的細胞に作用して特定の応答を引き起こす』物質と定義されます。ホルモンは全身のあらゆる受容体に作用するわけでなく、特定の細胞や器官にのみ作用します(図1)。
■ホルモンが標的細胞に届く仕組み(図1)
20世紀初頭に、内分泌腺で作られた化学物質が特定の場所で働くことが発見され、ホルモンという概念が生まれました。その後、視床下部の神経細胞がホルモンを産生・分泌して、下垂体ホルモンの合成・分泌をしていることがわかりました。
近年、内分泌系以外にホルモンを産生している細胞が発見されたことで、ホルモンの定義は拡大されています。
ホルモンは受容体に結合して作用する
内分泌細胞(臓器)で作られたホルモンは血管に分泌され、標的細胞の受容体(レセプター)に結合することで作用がもたらされます。細胞にホルモンを分泌させる信号には、ホルモンによる化学的な刺激以外にも、体液性刺激、神経性刺激があります。
体液性刺激と神経性刺激
体液性刺激は内分泌線そのものに備わっている“センサー”から送られる刺激です。たとえば副甲状腺の細胞の表面にはカルシウムを感知する受容体があり血中のカルシウム濃度がわかるようになっていて、カルシウム濃度が下がると、ターゲット細胞に働きかけてカルシウム濃度を増加させる副甲状腺ホルモンを分泌します。神経性刺激はやストレスなど神経インパルスからの情報の刺激で、アドレナリンのように短時間でホルモンを放出させるのが特徴です。
作用する場所によって異なるホルモン
ホルモン分泌細胞は休むことなく必要となるホルモン分子を作っていて、多くのホルモンは分泌小胞※という場所に格納されています。信号を受け取ると、この分泌小胞が細胞の形質膜に移動して、開口分泌し、放出されます。
これらのホルモンは作用する場所によって、内分泌、自己分泌、傍分泌、外分泌の4グループに分けることができます(表1)。
※男性ホルモンや女性ホルモンは、分泌小胞に格納されていません。
■作用する場所で異なる働き(表1)
内分泌系のホルモンは内分泌器官の近くの血管に放出され、血流にのって標的細胞に届きます。他に分泌した細胞自身に働くホルモンを自己分泌、分泌細胞の近くにある細胞に働くものを傍分泌と呼びます。外分泌は汗(汗腺)や唾液、母乳など、身体の外に放出するもの差します。
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-7 成長ホルモンを味方にする本』より