
余分なグルコースはグリコーゲンへ
私たちが食事から摂った糖質(グルコース)は、インスリンというホルモンによって全身の細胞に届けられ、エネルギー源になります。その際、余分なグルコースはグリコーゲンへ変換され血糖値を下げ、肝臓や筋肉に蓄えられます。
インスリンの働きが低下するインスリン抵抗性
しかし食べ過ぎや運動不足、ストレス等によって、インスリンの働きが低下する「インスリン抵抗性」になると、細胞がグルコースを受け取れずに血糖値が高いままとなり、血管が損傷されてⅡ型糖尿病などを発症します。このインスリンの働きにテストステロンが深く関わっています。
インスリン抵抗性が高まると
たとえば、前立腺がんを治療する「内分泌療法」はテストステロンなどの男性ホルモンの産生を抑制します。その結果、インスリン抵抗性が高まり、さらに肥満、脂質異常などによる糖尿病のリスクを引き寄せる可能性があります。
テストステロン補充療法による改善
一方、このインスリン抵抗性は、テストステロン補充療法によって改善することが分かりました。ドイツのHEUFELDER博士らの試験によると、メタボリックシンドロームを有するⅡ型糖尿病患者の皮膚に、52週間テストステロンを補充した結果、糖尿病の指標が改善したと報告しています(図1、図2、図3)。
インスリン抵抗性とテストステロンの関係
また、フィレンツェ大学のCorona教授らのメタ研究※1によれば、59もの研究におけるテストステロン補充療法患者において体重、腹囲、BMI、体脂肪量の減少、血糖値、インスリン抵抗性の改善が確認されており、テストステロン・レベルの向上が糖尿病の改善につながることが示されています※2。
※1 複数の研究結果を統合し、より高い見地から分析する手法や統計解析のこと
※2 Giovanni Corona, et al. European Journal of Endocrinology (2016) 174, R99–R116
■テストステロン補充によるⅡ型糖尿病の改善(図1、図2、図3)
メタボリックシンドロームでⅡ型糖尿病を有する男性32人を2グループに分け、16 人は食事療法と運動療法のみを実施。残りはそれに加え1日1回皮膚にテストステロンジェル50mgを塗布する補充療法を行った。52週後、糖尿病の指標として血清テストステロン、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、空腹時血漿グルコース、高密度リポタンパク質コレステロール、トリグリセリド濃度、および胴囲の値を比較した結果、テストステロン投与グループで大幅な改善が見られた。
▶糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の推移(図1)

▶糖化ヘモグロビン(HbA1c)とテストステロンの変化(図2、図3)

7.0%未満(左)および6.5%未満(右)のHbA1c値を達成している患者の割合。
ピンク色=食事療法と運動療法のみ
紫色=食事療法と運動療法および経皮テストステロン投与

52 週間治療後の血清総テストステロンとフリーテストステロンの変化。
ピンク色=食事療法と運動療法のみ
紫色=食事療法と運動療法および経皮テストステロン投与
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-4 テストステロンの健康力』より

