カロテノイドレベルの上昇が死亡リスクを低下させる
2021年6月11日付JAMA Network Open誌電子版にて発表された藤田医科大学の藤井亮輔博士らの論文によれば、血中のカロテノイド濃度が25%上昇するごとに、総死亡リスクが15%低下し、がん死亡リスクも18%低下、心血管死亡リスクも14%低下することが明らかになりました。カロテノイドの抗酸化作用により炎症を抑制することで、がんや心血管疾患などの生活習慣病のリスクを低下させた可能性があると考えられています。
カロテノイドの摂取と健康の関係
これまでにも、カロテノイドの摂取と健康の関係については多くの研究が行われ、カロテノイドががんや心血管疾患などの予防に役立つことが示されています。また死亡とカロテノイドの摂取の関係を調べた研究もいくつかありますが、それらのほとんどは追跡を開始する時点で一度だけ測定された血清カロテノイドレベルと、その後の病気の発症または死亡との関係を調査していました。
3000人以上の22年分のデータを収集し分析
藤田医科大学では、日本人の成人の血清カロテノイド濃度を年に一度測定し、そこに反映される摂取量の変化も考慮して、総死亡、がん死亡、心血管疾患死亡のリスクとの関係を長期的に検討しました。
対象となったのは、北海道南部の八雲町の住民3116人です。1990年から1999年までの間に登録された40歳以上の住民が健診を受け、毎年の健診時に採取された血液中の血清カロテノイド濃度を2011年まで測定。死亡の有無の追跡は2017年12月まで行われ、追跡期間の中央値は22.3年に及びます。
明らかにされたカロテノイドの長寿健康力
カロテノイドレベルが人の健康状態や寿命に対してどれほど影響を与えるかについて、またカロテノイドレベルの継続的測定の重要性について、この研究は多くの可能性を示唆しています。
出典:Fujii R, et al. JAMA Netw Open. 2021;4(6):e2113369.
血清総カロテノイド値が25パーセント上昇した場合、ハザード比(=HR:統計学上の用語で、臨床試験などで使用する相対的な危険度を客観的に比較する方法/1より小さいほど死亡リスクに対する抑制効果が高いことを示す)がどのように変化するかを調査しました。その結果、カンタキサンチンを除く、表組内のすべてのカロテノイドが、全原因死亡リスクを低下(HR 0.85=死亡リスク15%低下)させていました。
出典:JAMA Netw Open 2021; 4: e2113369
上記同様に、血清総カロテノイド値が25パーセント上昇した場合、ハザード比でがんによる死亡リスクの変化を調査しました。その結果、カンタキサンチンを除く、表組内のすべてのカロテノイドが、がん死亡のリスクを低下(HR0.82=がんによる死亡リスク18%低下)させていました。
出典:JAMA Netw Open 2021; 4: e2113369
上記同様に、血清総カロテノイド値が25パーセント上昇した場合、ハザード比でCVD(心血管疾患)による死亡リスクの変化を調査しました。その結果、カンタキサンチンを除く、表組内のすべてのカロテノイドが、がん死亡のリスクを低下(HR0.86=CVDによる死亡リスク14%低下)させていました。
出典:JAMA Netw Open 2021; 4: e2113369
栄養書庫発行 : 『ヘルステックガイドシリーズ-0 カロテノイドチェッカー』より