わさびの基礎知識
本わさびは、アブラナ科、ワサビ属で日本原産の多年草植物です。山間地の湧き水や清らかな渓流で栽培される沢わさびと、湿気の多い涼しい土地の畑で栽培される畑わさびがあります。沢わさびは水温が 8~18度で生育し、最適温度は12~13度、真夏でも16度以下であることが望ましく、澄んだ豊富な水を必要とすることから、日本でも限られた場所でしか栽培できません。
沢わさびも畑わさびも植物自体はまったく同じもので、育つ環境により名前が変わります。
根茎をすりおろして用いられるのが、沢わさび。一般的に「生わさび」と呼ばれています。一方、わさび漬けなどの加工用に用いられるのが、畑わさびです。よく家庭で使われているチューブ入りのわさびや粉わさびの主な原料となっているのが、西洋わさび(ホースラディッシュ/山わさび)です。
わさびの食用の歴史
本わさびの食用の歴史は古く、飛鳥時代から薬草として珍重されていました。現代では寿司や刺身、そばなど日本人の食生活に欠かせない薬味として幅広く親しまれています。また、独特の香り、辛みを持つ本わさびは近年、日本食のブームとともに海外でも注目が高まっています。
古来、抗菌作用や消臭作用が知られていますが、1970年代以降は、その機能性にも注目が集まり、現在では実にさまざまな効果、効能が明らかにされています。
利用は約1300年前から~わさびの歴史
【飛鳥時代】
奈良県立橿原考古学研究所の調査によると、飛鳥京跡苑地(えんち)遺構から、薬草名や処方を記したと思われる七世紀後半の木簡が数種類発見され、その中には、「委佐俾三升(わさびさんしょう)」の文字も含まれていたといいます。
【平安時代】
日本最古の薬草事典の「本草和名(ほんぞうわみょう)」に、「山葵」の記載があり、わさびが薬草として用いられてきたことを知ることができます。
【江戸時代初期】
わさびが栽培されるようになったのは、江戸時代初期。美食家で当時としては長生きしたといわれる徳川家康に献上したところ、その風味を大変気に入り、わさびの葉が徳川家の葵の家紋に似ていることから門外不出にしたといわれています。
【江戸時代後期~】
わさびが現在のように寿司の薬味として使われだしたのは江戸時代の文化・文政年間(1804-1830)のころ。わさびを付けた握り寿司が考案され、江戸の町でブームとなり、庶民の間に広まっていきました。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-9 わさびの健康・美容力』より