アクネ菌は健康な肌にも存在する
ニキビの原因として知られ、悪者扱いされるアクネ菌ですが、じつはニキビのない健康な肌にも存在しています。アクネ菌は嫌気性の菌なので、酸素のある環境ではあまり増殖できず、通常は毛包や皮脂腺に多くいます。
しかし、皮脂腺から出る皮脂が、多すぎたり毛穴が詰まると毛包に溜まり(白ニキビ)、その中でアクネ菌が炎症タンパクを出すことで赤いニキビが発生します(図1)。
■ニキビができるまで(図1)
毛穴が詰まり皮脂が溜まることで「白ニキビ」ができます。さらに過剰な皮脂をエサとするアクネ菌が増殖すると炎症を起こして「赤ニキビ」や「黄ニキビ」になります。そのまま放置すると、炎症が悪化してシミや瘢痕(ニキビ跡)になる可能性があります。
ニキビの原因はアクネ菌自体ではない
要するに、アクネ菌が炎症タンパクを出す時にニキビを引き起こすのであって、アクネ菌自体が原因でニキビになるわけではありません。
守るものと毒
アクネ菌はリパーゼという皮脂を分解する酵素を持っていて、皮脂をグリセリンと遊離脂肪酸に分解するという大切な役割を果たしています。毛穴が正常な状態では皮脂が毛穴を通って表面に排出され、さらにアクネ菌によって作られたグリセリンは肌の保湿に役立っています。
しかし、アクネ菌が出す遊離脂肪酸は炎症などの肌トラブルの原因になることがあります。つまりアクネ菌は、皮脂という肌を守るものと毒の両方を作り出しているのです。
アクネ菌にはタイプがある
さらに最近の研究では、このアクネ菌にも、悪玉の顔つきをするタイプⅠ、善玉の顔つきをするタイプⅡやタイプⅢなど、善玉菌、悪玉菌の種類があることが確認されています(図2)。近年ではこうした善玉菌のアクネ菌を使った製品開発の研究も進んでいます。
■アクネ菌の働きとDNAタイプ(図2)
アクネ菌を遺伝子レベルで分類すると、DNAタイプはD1、D2、D3、D1/D3の4種類に分類されることがわかりました。ニキビ肌にはD3が多く存在し、健常な肌であっても10代はD3が多いことも判明しています。
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-5 美肌菌きれい研究ブック』より