常在菌とは
菌というと悪いもの、汚いものというイメージがありますが、私たちは生まれてから死ぬまで、たくさんの菌の力を借りて生きています。人の身体に存在する(共生する)細菌は常在菌と呼ばれています(図1)。
■常在菌の分布と数(図1)
常在菌は私たちの身体を守るボディーガードの役目を担っています。皮膚だけでなく、口、鼻、のど、気道、食道、小腸、大腸、生殖器、肛門など、外界と接している部分に生息しています。
常在菌は人の細胞約10 兆個に対して、数十兆個も存在しています。細胞数に対してはるかに多く、中でも大腸には30 兆個を超える常在菌がいます。他の臓器に比べると群を抜いて多く、これは大腸が食べ物を発酵させる「袋」だからです。他には口腔や小腸には数億~数十億個いて、逆に脳や肺、泌尿器などの臓器には常在菌がいません。
過酷な環境の常在菌
外界と接する皮膚にも常在菌が存在しています。ただし、腸のように栄養豊富な環境でどんどん増えているわけではなく、水分を奪う外気にさらされながら脂分や少ない水分などを食べてなんとか生き延びています。実は過酷な環境に置かれているのが皮膚の常在菌なのです。
皮膚常在菌にも善玉菌、悪玉菌がいる
こうした常在菌の集まりは細菌叢(フローラ)と呼ばれ、人と共生して生きているため、健康な人には病気などの悪影響を与えません。ただ、中には悪いことをする菌もいるので、体にいい影響を与える菌を善玉菌、悪い影響を与える菌を悪玉菌、状況によってどちらにもなりうる菌を日和見菌と呼んでいます。皮膚の常在菌も同じで、肌によい働きをする善玉菌と肌トラブルを起こす悪玉菌、普段はあまり影響を及ぼさない日和見菌がいます。
栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-5 美肌菌きれい研究ブック』より