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栄養書庫 NUTRIENT LIBRARY

美肌は皮膚の常在菌を育てるバイオスキンケアの時代へ

東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座講師
出来尾 格 医学博士

出来尾格先生

身体には30兆個以上の常在菌

私は現在、東京慈恵会医科大学皮膚科で講師を務めながら、皮膚微生物学、アトピー性皮膚炎、ニキビを専門とした皮膚の常在菌の研究を20年以上続けています。
私たちの身体には常在菌が30兆個以上もいると言われていて、その大部分は大腸の常在菌です。腸内フローラや細菌叢という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。もちろん口腔など他にも億単位の常在菌が存在している臓器があります。皮膚にもこうした常在菌が数十~数百億個も生息していて、私たちの肌の状態に影響を与えているのです。

皮膚のメインの菌は3種類とシンプル

近年、腸内細菌の解析技術が進み、腸内には200種類ほどの細菌が存在することが確認されていますが、皮膚の場合、基本は人ひとりに20種類もいないぐらいです。その中でもメインとなるのは表皮ブドウ球菌とアクネ菌、そしてマラセチア菌の3種類となり、腸と比べるとかなりシンプルです。
表皮ブドウ球菌とアクネ菌、マラセチア菌は、皮膚の表面を弱酸性に保ち、グリセリンを作ったり、皮膚表面の栄養分を食べ尽くしてしまうことで病原菌の侵入を防ぐ役割を果たしています。

美肌菌とは

中でも表皮ブドウ球菌は陸上哺乳動物だけが持っている菌で、トラブルの原因となる黄色ブドウ球菌に対抗する抗菌ペプチドを作ったり、ニキビの原因となるアクネ菌が異常に増えすぎるのを抑えるなど様々な役割を果たして、肌にとって多くのいい影響を与えています。感染症もほとんどなく、増えれば増えるほど美肌に導いてくれる菌ということで、この表皮ブドウ球菌を指して『美肌菌』と名付けました。

CNS=美肌菌の4つの働き

さらに美肌菌の研究が進むにつれて、表皮ブドウ球菌とほぼ同じ役割を果たす別の菌を持っている人がいることも判明しています。表皮ブドウ球菌は、正式にはスタフィロコッカス・エピデルミディスと呼ばれています。ただ人によっては、スタフィロコッカス・キャピティス、スタフィロコッカス・キャプレ、スタフィロコッカス・ワルネリという別な菌を持っている人もいるのです。
この4種類は合わせてCNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)と呼ばれ、現在ではこのCNS=美肌菌と位置づけています。CNSと呼ばれる美肌菌には、以下のような働きがあります。


◦グリセリンを産生し、肌のバリア機能を補助する
◦感染性のある微生物の栄養分を奪う
◦黄色ブドウ球菌に対抗する抗菌ペプチドを分泌する
◦アクネ菌の異常増殖を抑制する(ニキビの予防)
この 4つの働きにより、トラブルが起こった肌を健康な状態へと導きます。

肌にとって悪いことはしない、しかも増やすことでよりキメが整った肌になる、という研究結果も出ています。このため、美肌を作るためには、美肌菌は欠かせないと言えます。

美肌菌イメージ

美肌菌を減らしてしまう原因

ただし、美肌菌は角質の表面や細胞の間に棲んでいるので、肌を洗いすると角質が壊れてしまいます。また合わない化粧品を使うことでかぶれてしまったり、ふやけてしまったりします。こうした破壊、かぶれ、ふやけは美肌菌にとっては大敵です。さらに化粧品に含まれるアルコールや保存料も美肌菌を減らします。

肌を傷めている人には

洗いすぎや化粧品、入浴法などで、肌を傷めている患者さんは、どこの皮膚科でも日常的にしょっちゅう見かけます。実際私の診察室にも毎週、そういった患者さんが訪れます。
その場合は、洗いすぎに気をつける、保湿をする、化粧品の成分に気をつけるといったことで美肌菌を増やし、角質を育てましょう、というお話をしています。

美肌菌を増やす方法

美肌菌を増やす方法として、最も手っ取り早いのは、美肌菌を直接塗ることですが、「他人の菌を塗る」というのは認可のハードルが高く、化粧品として扱うのは難しいのが現実です。しかし、自分の菌を培養して自分に戻すことはできるので、現在は自分の美肌菌を自分に戻す『美肌菌バンク※』という産学共同プロジェクトにも参加しています。

また最近の研究では、アクネ菌の中にも善玉菌と悪玉菌の両方が存在していて、タイプⅡ、タイプⅢといった、よい働きをする菌が存在していることがわかってきました。私は臨床医として、ニキビやアトピー性皮膚炎を専門としているので、さらに研究を重ねることで、ニキビの治療に役立てられるのではないかと期待しています。

今後、皮膚の様々な常在菌の働きが明らかになることで、これまでの肌のお手入れの常識も変わっていくと考えられます。これからのスキンケアは、ただむやみに保湿するだけでなく、美肌菌を増やし、角質を育て、肌本来の美しさを維持する、バイオスキンケアの時代になると確信しています。

※美肌菌バンク : 皮膚常在菌の表皮ブドウ球菌を自分の肌から採取し、培養後増殖させて自分の肌へ戻す完全オーダーメイドの最先端のスキンケア

ピンク帯

出来尾 格(できお いたる)

医学博士 
東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座講師

1974年、広島県生まれ。慶應義塾大学医学部卒。博士(医学)、日本専門医機構認定皮膚科専門医。島根大学病院皮膚科講師、イングランド公衆衛生局微生物部研究員、東京女子医科大学東医療センター皮膚科講師などを経て、現在は、東京慈恵会医科大学皮膚科講師。専門は、皮膚微生物学、アトピー性皮膚炎、にきび。長年皮膚常在菌の研究に携わっており、「美肌菌」の命名者でもある。NHK『あさイチ』『美と若さの新常識』などテレビ出演でも活躍中。

栄養書庫発行 : 『よくわかる健康サイエンス-5 美肌菌きれい研究ブック』より

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