免疫作用が過剰に働くと自分自身を攻撃
私たちの身体には、細菌やウイルスといった異物から身体を守るための免疫機能が備わっています。ところが、病原体でない異物や乱れた生活習慣などにより免疫に異常を生じると、免疫作用が過剰に働いてしまい、自分自身の細胞を攻撃してしまうことがあります。
核酸が免疫バランスを整える
アレルギー疾患の特徴の一つに、血液中にIgE抗体が増えることがあげられます。IgE抗体が肥満細胞(マスト細胞)※と結合し、アレルゲンと出会うことで肥満細胞からヒスタミンが放出され、アレルギー反応が引き起こされます。IgE抗体は産生を抑制するTh1細胞と産生を促すTh2細胞があり、ヘルパーT細胞によりコントロールされています。核酸はこのTh1細胞を活性化させ、Th2とのバランスを保ち、その結果アレルギーが改善すると考えられています。
■ アレルギー発症のメカニズム
花粉症は多くの人が悩まされる代表的な免疫疾患です。免疫システムが過剰に反応するアレルギー疾患の発症は、ヘルパーT細胞の一つであるTh2細胞が原因になります。核酸はTh1細胞を活性化させ、免疫物質をたくさん作り出すことで、Th2を抑えて良好なバランスを保ちます。
乳幼児の免疫と核酸の関係
20世紀初頭に粉ミルクが販売されるようになり、これを与えられて育った子供は、母乳で育った子供に比べてアレルギーを発症する割合が高いことが報告されました。その後、乳児期の免疫と核酸の関係について多くの研究が行われ、核酸の有用性が示された結果、世界中で粉ミルクに核酸(ヌクレオチド)が添加されるようになりました。
■ ヌクレオチド摂取によるサイトカインの産生細胞と機能
ヌクレオチド非添加粉ミルクを与えられた乳児と比べ、母乳またヌクレオチド添加粉ミルクを与えられた乳児は、NK細胞の活性、血液中のインターロイキン(IL-2)レベル、免疫グロブリンM(lgM)も高いことが分かりました。
免疫機能の向上にも働く
また、マウスを用いた研究により、ヌクレオチド摂取がアレルギー性の免疫反応を抑制するだけでなく、腸管免疫機能の促進やナチュラルキラー細胞が関与する免疫機能の向上に働くことが分かってきました。
核酸には、免疫のバランスを正常に保つ役割だけでなく、免疫を高める効果もあると考えられ、さらなる研究が進められています。
※肥満細胞:ヒスタミンなどの化学物質を持つ細胞で、鼻や気管支の粘膜、目の結膜、皮下組織の血管周囲に広く存在し、アレルギー反応に関与している細胞のこと
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-34 核酸の秘密』より