緑黄色野菜や果物を常食している人は
人間の血液中のカロテノイドの分布・割合には、食事として摂取した緑黄色野菜や果物に含まれるカロテノイドの状況がそのまま反映されます。ルテイン、リコピン、βカロテンを多く含む緑黄色野菜や果物を常食している人たちは、血液中に同様のカロテノイドが高濃度で存在します。
特定のカロテノイドは決まった臓器へ作用する
しかし、体内に吸収されたカロテノイドは全身の臓器・組織に等しくいきわたるわけではありません。特定のカロテノイドは決まった臓器に蓄積され、特定の作用を示すことが確認されています。
このことから、ある単体のカロテノイドのみを摂取するのではなく、複数のカロテノイドをバランスよく摂取することが効率的であると考えられます。
これが「マルチカロテノイド」の意義なのです。
現代人の摂取事情
一方で、現代人は充分な量の緑黄色野菜、果物を食事で摂ることが難しくなっています。また、化学肥料の利用などによる土壌の変化などで、野菜や果物の栄養価が低下しているのも事実です。そこでマルチカロテノイドのサプリメント補給によって、主要なカロテノイドの血中濃度を理想的な比率で上昇させることが重要です。
精製されたマルチカロテンは通常の食事から摂取したカロテノイドより迅速に血中に吸収されるため、1日5〜10mgのサプリメント摂取で血中のカロテノイド濃度を効果的に高めることが期待されています。
カロテノイドと合わせて効果が高まる栄養素
◉アントシアニン
果実や花などに含まれる、水に溶ける(水溶性)ポリフェノールです。赤や紫の色素成分であるポリフェノールは抗酸化作用が強く、活性酸素と反応して細胞を守り、動脈硬化など生活習慣病の予防効果が期待されます。
◉ビタミンE
脂溶性(油に溶ける性質)で非常に強い抗酸化作用を持ちます。細胞の劣化の原因になる過酸化脂質の生成を抑制するため、血管や細胞膜などの酸化障害を防ぎます。ナッツ類、ウナギなどの魚介類、大豆、緑黄色野菜に含まれ、カロテノイドと同時に摂取出来ます。酸や熱に強く、通常の調理では失われません。年齢によって服用の上限が設定されており、成人男性でおおむね1日800㎎、女性で650〜700㎎となっています。
◉DHA(ドコサヘキサエン酸)
ルテインとの相乗効果が確認されており、本書で紹介した研究でも多く登場しています。イワシやサバなどの青魚に多く含まれます。人体では血液や脳の神経細胞、心臓など重要な部分に多く存在します。Garcia-Layanaらの研究で、早期加齢黄斑変性患者が12mgのルテインと280mgのDHAを一緒に摂取すると、プラセボ群と比較して、MPOD(黄斑色素光学密度)が2.75倍上昇したことが報告されています。
栄養書庫発行 : 『Nutrient Library-24 マルチカロテノイドの健康力』より